4月1日は、探偵にとって特別な一日じゃない。
 強いて言えば、この新生活目前の時期、そして春という季節は比較的仕事を得るチャンスが多い……ってくらいだ。

 この時期は何かとストーカーに関する事件が多い。
 特に盗聴器が仕掛けられていた、的な訴えはよくある。
 引っ越しをする時に発見したとか、環境が変わって出会う人間にも変化が生じたとか、そういった理由だろう。

 だからという訳でもないけど、春は好きだ。
 心がウキウキするとか、花見に出かけたいとか、そういうのは一切ないけど。

「……まだ10代なのに『花見』って」

「え? 花見ってそんな中年のイメージ?」

 同世代とはいえ、高校に通ってない俺と女子高生の胡桃沢君には多少のカルチャーギャップが存在する。
 そういう意味では、彼女がこの事務所にいてくれるのはありがたいけど……
 
「っていうか胡桃沢君、なんで午前中からいるの? 今日平日だよね」

「学校は今、春休みですけど」

 そうだった……
 一応中学までは普通に通ってたのに、すっかり長期休暇とは縁遠い生活に馴染んでしまって『春休み』って概念が脳内から消え失せていた。
 マズいな、実年齢を遥かに上回るスピードで精神が老いている。

「ところで所長、今日はエイプリルフールですよね。探偵事務所として、何か派手な嘘とかつかないんですか?」

「本日をもって、はざま探偵事務所は営業終了します、みたいな?」

「それはその、なんて言うか……誰も嘘だと思わないんじゃ」

 ヤダ酷い言われよう!
 この子、辛辣ゥー!

「この機会にバズって、フォロワー増やしましょうよ。今のままだとこのSNS時代を生き残れませんよ?」

 SNSに消極的だった我がはざま探偵事務所だけど、流石にそうも言っていられない現状を直視した結果、Twitterに関しては出来るだけ活用するという方針になった。
 と言っても、探偵業に関するたわいもないこぼれ話を投稿したり、他人の面白動画をリツイートしたりする程度だけど。
 流石に過去の事件の経緯や依頼主のプライバシーを軽々しく扱う訳にはいかない。

「でも、フォロワーから依頼が来た事一回もないんだけど」

「フォロワーが少ない探偵事務所って信頼できないって思われますよ? フォロワーの数が戦闘力みたいなところありますし」

「……マジで? 今そんななの?」

「今そんなです。そろそろインスタも始めた方が良いですよ。美味しそうな都内のスイーツを網羅するのです!」

 探偵もインスタ映えを気にしないとダメな時代か……世知辛い世の中ですね。
 あと助手たるものちゃんと私欲を隠しましょう。

「まあそれはおいおい考えるとして、バズりそうな嘘って具体的にどんな感じ?」

「そうですね。『助手の女の子(16歳巨乳)が昨晩から連絡取れない』みたいな嘘なら食い付かれるんじゃないですか?」 

 確かに別の意味で食いつかれそうだ……女性蔑視を忌み嫌う人々に。

「もっと健全なのない? しずかちゃんも言ってたじゃん。後でガッカリさせる嘘よりホッとさせる嘘の方が良いって」

「……それどういう意味で言ってます? ねえ」

「いやいやいやいや他意ない他意ない他意ない他意ない」

 怖……!
 っていうか、別にそんなコンプレックス発動させるほど……いやもう触れないでおこう。

「と、取り敢えずアレだよ。こういうのは実際バズってる呟きを参考にするのが一番だよね」

「そうですね。私もそこまで他人の嘘を関心持って見た事ないですし」

 まだ若干トゲがあるけど、なんとか地雷源は抜けたか。
 没個性なの気にしてる割に、俺に対する攻撃性だけは着々と個性的になりつつあるのホント迷惑だから止めて欲しい。

「Twitterっていいねの数の順に表示できるみたいな機能ありましたっけ」

「いや、ないと思うよ。RT数をリアルタイムで観測してるサイトがあった筈だから、そこをチェックするのが妥当かな」

 そうは言ってみたものの――――

「これホッキョクギツネの赤ちゃんですって書いてるけど、普通に白いワンちゃんですね。間違いありません」

「その嘘見抜ける……? っていうかこれ、嘘とか関係なく動物が可愛いからいいね多いだけじゃない?」

「これは普通にフクロウですね。ウサギって書いてますけどウサギこんなんじゃありません」

「これも動物! ただ可愛いだけ!」

「他には……友達の家のインコに『早くしろよ』って教えたらその家三日連続家族会議になった」

「……」

 政治関連、アニメやゲーム、動物、芸能、なんか上手い事言った的なツイートが大半を占めている。
 これ別にエイプリルフールじゃなくても、RT多いのって大体このラインナップなんじゃないの? 

「あ――――」

「今度は何? カッパでもいた?」

「いえ、これなんですけど」

 心なしか、胡桃沢君の顔が少し強ばっている。
 一体どんな呟きなのか――――

 


 リンリン @lynn_lynn 10時間
 本日11時59分に自死して参ります

 


「……ん」

 思わず息を呑んだ。
 これは紛れもなく自殺予告だ。

「どう思います? やっぱりエイプリルフールの嘘……ですよね?」

「普通に考えればね」

 まず目を引くのは『自死』というショッキングな言葉。
 でもその前の記述『11時59分』を考慮すると、一気にエイプリルフール感が強くなる。

 エイプリルフールでも嘘をついていいのは午前中だけ――――
 なんてのはイギリスのオークアップルデーに倣った風習で、イギリスの文化と歴史的に根深い関わりがある訳じゃない日本でも結構浸透してるのは謎だ。

 その是非は兎も角、そういう有名なルールがあるのは間違いない。
 そしてこの11時59分という時刻は、それを色濃く反映していると考えられる。
 11時59分まではこの嘘を引っ張るよ、という意思表示かもしれない。

「でも、幾つか気になる点がある」

「え、こんな短い文の中にそんなのあります?」

「ああ。まず主語がない」

 主語がない――――それ自体は何の問題もない。
 正式な文章とは程遠い個人アカウントの一呟きに対して主語の有無を論じるのは、普通なら無意味だ。

 でもこの呟きは自殺予告。
 自分の命を使って、全世界に向けて自分の意思を発信している事実に他ならない。
 言うなれば究極の承認要求とも言える。

 そんな人物が、この大勝負とも言える呟きに主語を省くだろうか?

「次に、自死って表現」

「? 何か変ですか? 最近は普通に使われてますよね」

 確かに使われてる。
 自ら命を絶った者に対する『自分を殺した』という当て字が表現として強過ぎる、遺族の心に傷を付ける――――といった理由で、表現をソフトにした言葉だ。

 不謹慎だけど、自殺よりも字のビジュアル的にインパクトが弱い……とも言える。
 なら、この究極の承認要求の一文に敢えて自死という言葉を選ぶだろうか?

 勿論、普段から自死という言葉を用いていた、或いは自死という言葉の方を先に知りこちらを使うのが本人にとって自然だった可能性はある。
 でもそうじゃない可能性もある。

「考えすぎじゃないですか?」

「かもしれない。でも、更にもう一つある」

「ああ、ここまで来ると私にも分かります」

 そりゃそうだよな、もうこの言葉しか残ってない。
 
『参ります』って表現だ。
 敢えて謙譲語を使う事で、文章に説得力を持たせようとしたのかもしれない。
 とはいえ、自然な表現とは言い難い。

 つまり――――

「この文章はどうにも作為的過ぎる」

「なら嘘で決まりじゃないですか」

「いや……嘘だったら、もう少し作為性が薄まると思うんだ」

 嘘をつく人間は、常にその嘘に対する相手の反応に考えを張り巡らせる。
 そして大抵は、『本当っぽい嘘』をつきたがる。
 つまり、嘘である事を前提にしながら本当っぽさに向かって近付こうと努力するのが常だ。
 
 でも、この呟きにはそれが一切見られない。
 自然な自殺予告に見せようという気が全く感じられない。
『11時59分』なんてその典型だ。

「でも所長、もしこの人が本当に死のうと考えているんだったら、こんな嘘臭い文章考える余裕ないんじゃないですか?」

「そうなんだよね……」

 生物は基本、自分の命を守る事を本能として持っているんだから、自ら死を選ぼうとする時点で生物としてエラーが出ている。
 脳が誤作動を起こしているようなもんだ。

 そんな状況にあって、この文章はかなり不自然。
 もっとシンプルに、若しくは断片的になるだろう。

 でも、だからといって嘘と決め付ける事も出来ない。
 もしエイプリルフールのネタだとしたら、幾らなんでも安直過ぎる。
 通報されるのを嫌って、敢えて一目で嘘とわかるようにした――――とも考えられるけど、それならそもそもこんな呟きしなきゃいい。

 この呟きには確かな自己顕示欲が見える。
 でも、その割に自分語りの要素が一つもない。
 今までの自分の生い立ちや自死を決意するに至った経緯を語りそうなものだけど……

 


 リンリン
 @lynn_lynn

 趣味は映画とカラオケ。毎日楽しく生きています。タピオカミルクティーとパイナップルケーキLOVE

 SHIBUYA

 2017年10月に登録

 


 自死に関する呟きは一つしかないし、プロフィールにも強い承認要求は感じられない。

 結局、嘘だとしても本当だとしても不自然なんだ、この呟きは。

「それにしても、凄い数のいいねですね。これどういう気持ちで押してるんでしょうか……」

「深い意味はないと思うよ。『おう死ね死ね』みたいな人も中にはいるかもしれないけど、大半は『この呟きを見て感情が動いた』くらいの意味で押してるんじゃない」

「そうですか……なんかよくわかりませんね」

 俺は――――どうだろう。
 探偵って職業は、この手の話を『興味深い』と捉えてしまう。
 他人の命を軽んじているつもりはないけど、殺人事件をはじめとした人の死が絡んだ事件に対する好奇心がやたら強い。

 一言で言えばゲス。
 そんな俺に比べれば、承認要求の権化なんて可愛いものだ。
 他人の死を玩具にする人達と俺との間に差なんて何もない。

 だからこそ――――俺はこの呟きを無視出来ない。

 リプライを送る人の中には『思い留まって下さい』と呟きの内容通りに受け取った者もいれば、『エイプリルフールだからって不謹慎過ぎる』という真面目に説教している者もいる。
 でも大半は『つまんね』や『バカじゃないの?』といった軽い返信で、それ以外も言葉のトゲの数が違うだけで大体中身は同じだ。
 そして当然、『通報した』という一文も多い。

 これらのリプライは、果たしてこのリンリンというアカウント名の人物にとって、得たかったメッセージなのか?
 いや、多分違う。
 違うから、更なるツイートが一つもないんだ。

 この自殺予告が本当なら、この人物は『自死の意思を敢えて発信するほど承認要求が強い』という事になる。
 もしそうなら、これだけのいいねとリプライがあれば、相当な満足感を得ている筈。
 到底我慢出来ず、何らかの反応を示すだろう。

 逆に幼稚な嘘だったら、これだけ通報通報言われてて消さない勇気はないだろう。
 時間を区切っている以上、これは完全な緊急事態。
 幾らエイプリルフールとは言っても、警察が動く可能性は高い。

 でも、このアカウント主はそのどちらも選択していない。
 何かあるんだ。
 この人物が欲している反応が。

 アカウント名はリンリン。
 好物はタピオカミルクティー。
 そしてパイナップルケーキ――――

「……台湾人か」

「え、そうなんですか? あ、でもタピオカティーって確か台湾発祥ですよね」

 パイナップルケーキも台湾のお土産として有名だ。
 リンリンって名前も、本名じゃないにしろ台湾人として矛盾はない。

 この人物はきっと台湾人だ。

 だとしたら、台湾ではエイプリルフールは特別な何かがあるのか?

「特にそういうのはないみたいです。普通ですね」

 ……違ったか。

 外国人が日本に来て、文化の違いや様々な理不尽に苦しみ、その果てに自死を決意した――――ストーリーとしては一応出来上がっている。
 でも、だからといってツイートの内容に信憑性が増した訳じゃない。

「あ、もしかして」

 胡桃沢君の付けているホッキョクギツネの耳がピクンと動く。
 ……なんで動く?

「自死と自首を間違えたんじゃないですか? 台湾の方なら、日本の漢字を間違っても不思議じゃないですし」

 成程。
 だとしたら、この人物は自首を宣言するという嘘をついたか、実際に宣言したかのどちらかになる。

「本日11時59分に自首して参ります、だと嘘にしては弱いし、本当だとしたらとっくに間違ってるの気付いて訂正するんじゃない?」

「そうですね……この反応を見ればわかりますよね」

 意気消沈してるけど、何気に助手として成長してるな胡桃沢君。
 台湾の人ならではのツイートって推理は悪くない。 

 この人物のTwitter上のプロフィールをもう一度見直す。
 居住地は渋谷。
 年齢や性別、人となりについては確証を得られる材料がない。

 そして、もう時間もない。
 現在、4月1日(月) 11時02分。

「あと一時間を切りました」

 胡桃沢君の声に危機感が生じる。 

 一時間……一時間か。

 このアカウント主は、本当に死を選ぶのか?
 それとも、ただのエイプリルフールのネタなのか?

 そろそろ結論を出さなければならない。

 俺達にとって、この人物は依頼主でもなければ知り合いですらない。
 例えどんな結末を迎えても、何がどうなる訳でもない。
 ここで見当違いな行動に出れば、無駄な恥をかくだけかもしれない。

 でも、その程度何の問題もない。
 恥なんてものの大半は、堂々としていれば大したデメリットにならないものだ。

「所長……」

 助手の胡桃沢君が申し訳なさそうな顔でこっちを見ている。
 彼女なりに思うところがあるんだろう。
 この呟きを見つけた事で、俺に後味の悪い事件を押しつけてしまった……とか。

 ならば俺は、決断すべきだ。

「決めたよ、胡桃沢君。このアカウント主にリプライを送ってみる」

「え? 関わるんですか……? 大丈夫なんですか?」

「どうかな。万が一、本当に自死したら『止められなかった』って悔やむだろうし、嘘だったら『無様に釣られた』と悔しがるかもしれないね」

「だったら……」 

「探偵っていう生き物は、どうしようもなく死に惹かれてしまうんだ。だから、君の所為じゃない。単に俺の嫌らしい習性なんだよ」

 これで、目的の半分は果たした。
 あとはもう半分だ。

 送る内容はもう決めている。
 正解か否かはわからないし、確証を得られるほどの手がかりは多分ない。
 でも、もう決めている。

「やっぱり台湾人だからこそのツイートなんだ、これは」

 探偵は死に惹かれ、そしてもう一つ――――答え合わせに惹かれる。
 真実と言い換えても良い。

『没有天堂』

 頼むぜグーグル翻訳。
 この中国語が間違ってたら、ただのアホだからな……

「所長……これどういう意味なんですか?」

「天国はない」

「え? それって単に自死は良くないって事を遠回しに言ってるだけなんじゃ……」

「一時間。そして台湾。それがヒントになった」

「ふぇ? 何がですか?」

「お手柄って事だよ。胡桃沢君」

 日本と台湾の時差は一時間。
 東京は台湾より一時間進んでいる。
 なら、東京の11時59分は、台湾の10時59分だ。

 1059。
 つまり――――

「10(テン)5(ゴ)9(ク)……?」

「そ」

「な……なんですかそれ……」

 胡桃沢君、膝から崩れ落ちるの図。
 無理もない。
 余りにも下らない――――そう思ったんだろう。

「一体何の目的があって、そんな語呂合わせを? 暗号にしては幼稚過ぎますよ……」

「本当に死にたいと思っていたから、じゃないかな」

「……えっ」

 恐らく胡桃沢君は、この件の顛末を茶番だと思ったんだろう。
 でも違う。

「確かに語呂合わせ自体は幼稚だけど、仕掛けに気付くにはこの人物が台湾人だと知っていて、かつ日本語への理解が必須だ。多分……身内に向けたメッセージだったんだ」

 それが『日本にいる身内』なのか『台湾にいる日本語を喋れる身内』なのかはまではわからないけど。
 
「身内に向けて……天国へ行くってメッセージを……?」

「そう。だから、身内以外のリプライには一切反応していない」

「でも、エイプリルフールにそんな……紛らわしいじゃないですか」

「うん。普通なら避ける。でも――――」
 
 本当に自死を決断するような人には余裕なんてない。
 "その日がエイプリルフールである事を考慮する"余裕さえも。

 だから、このツイートには信憑性がある。
 俺はそう判断した。

 答えは確かめようもない。
 だから、恥を覚悟であんなリプライを送った。

 天国なんてない。
 あなたのしようとしている事は、底のない穴に飛び込もうとしているだけだ。
 ない所に行こうとしても、決してそこには届かない。

 あなたを見ている人がここにいる。
 あなたの事を色々考えて、いっぱい考えて、そして慮った人間がいる。

 ここはあなたの故郷じゃないけど、エイプリルフールに真面目に取り組む変わった国だけど、生きる術はきっとある。
 だから逝くな。
 あなたはまだ生きられる。

 そんなメッセージを、あの四文字に込めた。
 これ以上は書けない。
 そこまでウェブ翻訳をアテには出来ないからな……

「所長!」

 沢山のリプライが今もライブで送り続けられている中――――


 俺の送ったリプライに、いいねが一つ付いた。


「これって……」

「……」

 それが思い留まった合図なのか、最期に自分に構った人間への置き土産だったのか……は、このリンリンという人物の次の投稿がない限りわからない。

「所長、11時59分になりました」

「うん」

 これ以上出来る事はもうない。
 ただ見守るだけ。
 そして、いつまで見守ればいいのかも、やっぱりわからない。

 少し前、若くして重い病になったという人をTwitter上で偶然見かけた。
 治る見込みが薄く、死ぬ可能性が高い病名だった。
 その人は最近何かのマンガにハマって、そのマンガのファン達とTwitterを通じて仲良くなりたいと、そう書いていた。
 
 病気である事を報告した呟きには、それまでの同アカウントの呟きとは比較にならない数のいいねが付いていた。

 その人物が本当に病気なのかどうかはわからない。
 付けられたいいねが善意だけの蓄積なのか、何かの祭りのような感覚で積み重ねられたのか、それもわからない。
 そこには絶対に一つの真実があるのに、俺達に伝わってくる情報は余りにも曖昧で、それでいて妙に心を荒々しく掴んでくる

「12時……です」

 思わず目を瞑る。
 
 エイプリルフールにつく嘘は、その曖昧さを楽しむ為のもの。
 そうであって欲しいと願うのは――――子供じみているだろうか?

「あっ!」 

 胡桃沢君の声が、瞼を強制的に開かせた。

 


 リンリン @lynn_lynn 今
 Hello Heaven

 


「……はは」

 肩の力が一気に抜けた。
 なんてエイプリルフールだ……ったく。

「わー、いいねが馬鹿みたいに溜まっていきますね」

「口悪いな」

「だって……人騒がせにも程がありますよ」

 それについては同感だ。

 でも……なんでだろう。
 この更新する度どんどん増えていくいいねを見ていると、何故か心が温まっていく気がした。
 みんなガキだねぇ、全く。

「もうすっかり春だね」

「ですね。ホッキョクギツネは冬眠の季節です」
 
「あれ? 胡桃沢君、そんな耳付けてて知らなかったの? ホッキョクギツネは冬眠しないよ?」

「え!? 嘘でしょ!? エイプリルフールの嘘ですよね!?」

「あーあ。キャラ崩壊」

「ぜ、絶対嘘です! 私を無個性のままでいさせる為の陰謀ですよね! 私知ってます所長性格悪いって!」

 さて、この大量のいいねの輪の中に加わるべきか否か。
 一先ずそれから考える事から、午後の業務を始めるとしようか。









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