「今日の夜はファイアーエムブレム紋章の謎ドラフト会議を行う」

 一家団欒の時間、親父がまた訳のわからない事を言い出した。

 ドラフト会議……定期的に親父がぶっ込んでくる、謎の遊び。
 大抵、自分が子供時代にプレイした90年代のゲームを題材にして、家族四人でゲーム内の特定の何かを取り合い、そのラインナップの豪華さや良い感じ度で優劣を競う奴だ。

「母さんは反対」

 お、普段はなんやかんやで親父に付き合う母さんが珍しくキッパリ……

「どう考えても今は風花雪月でしょう? どうして紋章なの? 風花で良くない?」

 そっちですか!
 いや確かに主張はご尤もだけれども……

「そうだな。今やFEと言えば風花雪月だ。シリーズ開始から約30年経って最高傑作を生み出したスタッフはマジ凄い。だが! 俺は紋章の謎に思い入れがあるんだ! だからこっち! 絶対こっち!」

「老害……」

「老害言うな! まだ中年真っ直中だ! んじゃ多数決な! 紋章の謎が良い人ーっ!」

 挙手したのは二人だった。
 もう一人は俺。

「深海……?」

「いや、俺もどっちかっていうと思い入れあるの紋章の方だし」

 レトロゲー愛好家なんで。

「10代の癖して風花より紋章……そんな子に育てた覚えないんだけど……」

「でも若干腐り気味の母さんには風花より覚醒じゃ――――」

 思わず本音を呟いた瞬間、母さんの肘がテンプルを襲って来た。

「母さんそういうんじゃないから。出来の良いゲームが好きなの。わかった?」

「は、はい……」

 脳が揺れる。
 身内だからといって、何でもかんでも正直に話すのは良くないな……肝に銘じておこう。

「ところで、来未は?」

「来未ファイアーエムブレム知らなーい。アニメになってないもん」

「娘よ、紋章は良いぞ。イケメンも大勢いる」

「風花も沢山いますー! ホラ見てこの絵! 最高でしょ!?」

 娘にFEのファンアートを見せ合う両親。
 なんなのこの時間……

「え、何この金髪イケメン……来未こっちが良い」
 
「よっしゃあーーーーーー! 見たかコラ!」

 来未が選んだのは紋章のカミュだった。
 まあ、Fateの金ピカ好きだしな来未。

「と言うわけで、あらためてファイアーエムブレム紋章の謎ドラフト会議を行う!」

「ぶーぶー」

 母さんのブーイングは無視され、ドラフト会議は始まった。

 今回のドラフト対象は全ユニット。
 要は『ファイアーエムブレム 紋章の謎』に登場する味方キャラ全員の中から、自分の好みのキャラを一人ずつ選んでいく。

 被った場合は抽選。
 で、最終的に十人選んで、最も良い感じの軍勢にした人が勝ち。

 紋章の謎はFEシリーズ最初期の作品だから、今のFEほど複雑じゃない。
 基本的には能力……というかイメージが物を言う。
 最終的な強さだけじゃなく、仲間になった時の初期ステータスの印象とか、代名詞となる魔法とか武器とか、そういうのも加味される。

 例えば、最終的には強ステータスでも攻略中にあんまり使えないキャラは、強キャラのイメージは薄い。
 仲間になったばかりの頃は強いユニットでも最終的に能力が伸びない奴も同様。
 要は、攻略時も最終的にも使いやすいユニットが良い印象を持たれているって訳だ。

 バランスも大事だろう。
 アタッカーばっかり育てて回復役や壁役をおろそかにしてはダメ。
 SLGだから移動力もかなり重要だ。

 誰の軍勢がベストかは全員の判定で決める。
 トップになったら今週のトイレ掃除は免除。
 その日は最下位になった奴が担当する。

 なお、結果は単に指名した十人の総合的な強さだけじゃなく、見栄えの良さとかそういう要素も加味するらしい。
 単に強さ選手権じゃ、FE知らない来未が疎外感味わうからな。

 ちなみにリメイクじゃなくSFC版だから『三すくみ』すらない時代。
 ある意味、かなりわかりやすい。

「では一巡目スタートだ! それぞれ最も獲得したいユニットを指名しろ!」

 記名は手元にあるフリップに行い、いっせーのせで出す。
 そこで被ったら抽選だ。

 さて……誰を最初に指名しようか。

 取り敢えず、全ユニットを頭の中で整理しよう。

 


 マルス(ロード)

 アベル(ソシアルナイト/パラディン)
 カイン(ソシアルナイト/パラディン)
 ハーディン(ソシアルナイト/パラディン)
 ロシェ(ソシアルナイト/パラディン)
 ビラク(ソシアルナイト/パラディン)
 マチス(ソシアルナイト/パラディン)
 セシル(ソシアルナイト/パラディン) 
 ルーク(ソシアルナイト/パラディン)
 ロディ(ソシアルナイト/パラディン)
 ジェイガン(パラディン)
 ミディア(パラディン)
 アラン(パラディン)
 シリウス(パラディン)  

 オグマ(傭兵/勇者)
 ナバール(傭兵/勇者)
 シーザ(傭兵/勇者)
 ラディ(傭兵/勇者)
 サムトー(傭兵/勇者)
 アストリア(勇者)
 サムソン(勇者)

 ドーガ(アーマーナイト/ジェネラル)
 トムス(アーマーナイト/ジェネラル)
 ミシェラン(アーマーナイト/ジェネラル)
 シーマ(ジェネラル)
 ロレンス(ジェネラル)

 シーダ(ペガサスナイト/ドラゴンナイト)
 パオラ(ペガサスナイト/ドラゴンナイト)
 カチュア(ペガサスナイト/ドラゴンナイト)
 エスト(ペガサスナイト/ドラゴンナイト)
 ミネルバ(ドラゴンナイト)

 サジ(戦士)
 マジ(戦士)
 バーツ(戦士)

 ジュリアン(盗賊)
 リカード(盗賊)

 ゴードン(アーチャー/スナイパー)
 トーマス(アーチャー/スナイパー)
 ライアン(アーチャー/スナイパー)
 ジョルジュ(スナイパー)

 カシム(ハンター/ホースメン)
 ウォレン(ハンター/ホースメン)
 ウルフ(ホースメン)
 ザガロ(ホースメン)

 マリク(魔道士/司祭)
 リンダ(魔道士/司祭)
 ユベロ(魔道士/司祭)
 エルレーン(魔道士/司祭)

 レナ(シスター/司祭)
 マリア(シスター/司祭)
 エリス(シスター/司祭)
 マリーシア(シスター/司祭)
 ユミナ(シスター/司祭)
 ウェンデル(司祭)
 ボア(司祭)
 ニーナ(司祭)

 バヌトゥ(マムクート)
 チキ(マムクート)

 フィーナ(踊り子)

 チェイニー(コマンド)




「え!? あれ!?  カミュ様いないんだけど!?」

「そりゃそうだ……カミュは敵キャラだからな」

 すまぬ仮面さんがいるけど黙っておこう。
 っていうか、まんまシャアだよなこれ……よく当時問題にならなかったな。

 それはともかく、このユニットの中でオンリーワンな存在は――――マルス、ジュリアン、マリク、チキ、ユミナ、フィーナ、チェイニーあたりか。

 マルスはまあ主人公だし唯一のロードだし、成長率もHPを筆頭に優秀。
 ジュリアンは活躍の機会が多い盗賊でありながら成長率もかなり高く、力が特に伸びまくる。

 マリクはエクスカリバーが使い勝手良いし、チキは優秀なアタッカーであり壁役も兼ねる。
 ユミナは本人というかレスキューの杖があまりに有用。
 フィーナは唯一味方の再行動を可能にする支援ユニットだし、チェイニーの変身はかなり有効だ。

 まあ、普通に考えたらマルスが一番欲しい。
 メリクルレイピアが使える一作目(暗黒竜と光の剣)の方がより最高だけど……ファルシオンは微妙に使い勝手悪いんだよな。

 とはいえ、マルスは指名が被る確率が高い。
 支援・搦手の三人も欲しいけど、ここは純粋に戦力としてジュリアン、マリク、チキの中の誰かにしよう。
 
 ジュリアンはユニットとしての総合力は一番だけど、こいつ入れるとレナを入れない訳にはいかない。個人的に。
 マリクはエクスカリバー以外は代えが利くし、こいつ入れるならエリス様入れないと(カプ厨)。

 となると……チキかな。
 純粋に強い上にロマン枠でもあるし。
 この子入れるならバヌトゥ入れないと……とは特にならないしな。バヌトゥは。

 よし決定!
 幼女よ被るな!

「ふむ。俺の第一指名は【ジェイガン】だ!」

「私は【ナバール】指名」

「来未はこの【アストリア】っていう金髪正統派イケメン」

 ……。

 なんだそりゃそりゃ!!!!!


「母さんと来未はともかく、親父フザけてんのか? なんでジェイガンなんだよ! ジェイガン要らないだろ!」

「フッ、相変わらず浅はかな息子だな。この状況を読めていないのか?」

 なん……だと?

 いや、冷静になれフカウミ・ヒトトセ。
 確かにこの戦局は……俺の想定したものじゃない。

 親父は明らかにネタ狙い。
 母さんと来未は自分好みのイケメン。

 ……みんな強さやバランスよりもコンセプトを重視してやがる!

 そうだった、このドラフトは強さだけを追い求めるものじゃない。
 見栄えとか魅力も加味するんだった。

 キャラの魅力……それはすなわちユニットとしての華。
 俺だって、イケメンや美女が活躍する姿は心躍るし、老人やモブ顔が活躍する意外性にもグッと来る。
 特にグループとなると、ストーリーが見えてくる方がより魅力を感じる。

 例えばゲーム中でライバル関係にあるマリクとエルレーンを同じグループに入れる事で、バチバチやり合ってる会話が想像出来る。
 更にそこにリンダを加えると、なんか知らないけど新たな可能性が見えてくる気がしないだろうか……!
 そういう想像力をかき立てる面々にする事で、集団である意味が生まれてくる。

 俺以外の全員がそっちを重視している中、俺だけが強さを基準に選んだら――――

「それ、ただパラメータ高いだけの集まりじゃん。攻略サイトのオススメか?」

 そう言われるのがオチだ。
 そんなクソドラフトに価値はない。

 ドラフトはバランスが重要。
 即戦力とロマン枠を良い塩梅で指名しつつ、第三者にも狙いがわかるよう纏まりのあるものにしなくちゃならない。

 危なかった……危うくマルス、アベル、オグマ、ナバール、リンダ、エスト、フィーナ、ジュリアン、レナ、チキ……みたいなつまらないドラフトにするところだった。

 でもこうなると、二巡目以降はしっかりしたコンセプトを持って指名しないといけない。
 チキを獲得したのは不幸中の幸いだった。
 無個性の連中と比べて、チキはロリとか人外とかいろんな枠を作れる。

 とはいえ、紋章はロリも人外もそう多くない。 
 シーダを取っておけばオタサーの姫路線もありだったんだけど……チキではさすがに無理だ。
 
 ハーディンやマチスを指名して、ハイエース路線を目指すか?
 ロリっ娘に群がるヤベー奴ら、みたいな。

 いやいや、身内とはいえ女性二人いるこの場でそんな真似出来るか!
 変態扱いされるわ!

 ……そうだ、この状況を逆に利用すべきだ。
 女性に受けるグループにすれば勝機が見えてくる。
 ただし、イケメン路線は二人が既にやってるからボツだ。

 親父は明らかにネタ路線に走ってるし、俺は逆に癒やし系……十人家族みたいなファミリー路線で指名しよう。
 ほのぼのとしたメンバーを集めて、母さんや来未からの支持を得る。

 コンセプトは疑似家族。
 つまり家族計画。
 よし、これで行こう!

 しかしそうなると、祖父役にピッタリなジェイガンを先に取られたのは痛いな。
 くそ……初プレイの時の事を思い出してしまった。
 全然ステータス伸びないけどなんか見切りを付けられなくて、序盤の壁役にした結果、経験値いっぱい与えてしまった後悔の記憶……

 またか。
 また俺を苦しめるのかジェイガン……

 ジェイガン……!!

 一旦落ち着こう。
 祖父候補は他にもいるじゃあないか。
 ウェンデルとかボアとかバヌトゥとか。

 バヌトゥは要らない。

 普通に考えたらチキの祖父役にピッタリなんだけど、バヌトゥは要らないねえ!

 いいやもう、祖父は死んだ事にしよう。
 まず長兄だ。
 イケメンで頼りになりそうなキャラがいいな。

 候補はオグマ、アラン、バーツ、ジョルジュ、エルレーンあたりか。
 エルレーンは神経質な印象だし、バーツはワイルド過ぎるから他の面子が妥当かな。

 アラン良いな。
 アランは長兄っぽい。
 でも病弱なのは抵抗あるな……父役引退後は稼ぎ頭になって欲しいポジションだし。

 なら、ジョルジュだ。
 オグマも良いけど、逆に頼りになり過ぎてストーリーが思い浮かばない。
 ちょっと頼りないくらいの方が、十人家族の長男って感じがしない?

「では二巡目を指名するぞ。フリップに書けい!」

 ジョルジュはジェイガンほどじゃないけど、出オチ要員の一人。
 見た目優秀っぽいし性格も偉そうなのに成長率クソ過ぎてネタキャラと化した哀れなイケメン。

 俺が救ってやるしかないな!

「第二指名は【ジョルジュ】でいかせてもらう!」

「え、私も【ジョルジュ】なんだけど」

「え、来未も【ジョルジュ】……って兄ーにもじゃん」

 ……。

「なんでだよ!!!!!」

 なんで四人全員被るの!?
 どんな確率!?

「俺はジェイガンの御供に相応しい男として選んだんだが」

「私はこういうシュッとしたキャラが好みだし」

「来未は金髪イケメンが良い」

 ……確かに、全員指名しても不思議じゃないキャラではあったか。

 にしても、まさかジョルジュがこんな人気者になるなんて。
 この空間が唯一無二、空前絶後なんじゃないか?

 思い出すな……ジョルジュ無理して使ってたっけ。
 弓系のユニット全然育ててなかったから、パルティア使える弓使い他にいなかったんだよね。
 ゴードンとか詐欺野郎とか普通に優秀なのに。

 なんか回想してたら思い入れが急に強くなってきた。

「なら抽選だな。四人ともクジを引こう」

 ここは絶対に外せない。
 俺が責任をもってお前を大陸一の弓騎士にしてやるからな――――

「やったー! 来未金髪イケメンゲットだぜ!」

 普通に負けた……
 まーいいか、どうせ奴が大陸一なんてなれないし切り替えていこう。

 


 ――――とかなんとかやってる内に、もう五巡目終了。
 半分まで来ると、もうそれぞれのコンセプトが明確になってくる。


「ふっふっふ……順調順調」
 
 ジョルジュは外したものの、親父はどうやら満足いく指名になっているらしい。

 
 ジェイガン
 ハーディン
 トムス
 ミシェラン
 ビラク

 

 ……本当に満足してるのか?
 ジジイ、SAN値直葬、ツルツル、ツルツル、やらナイトって……ネタ狙いにしても酷いメンツだぞ。
 俺だったら耐えられないラインナップだ。

 恐らくこの後はバカ兄貴とサジマジバーツあたりを狙うんだろうけど、正直正視に耐えない。
 一体どういう理論で勝てると思っているのか。反吐が出る面子だ。


「いーい感じ♪」

 母さんもご機嫌だ。
 確かに、正直母さんにはしてやられた感がある。


 ナバール
 サムトー
 シーダ
 カシム
 ロレンス


 ジョルジュ狙いからの外れ2位でサムトー指名。
 その時点ではイケメンコレクターだった筈なのに……3位でシーダを指名した時点で完全に俺が思い描いていた『オタサーの姫路』線へと切り替えやがった。
 見事過ぎる。

 とはいえ、シーダが紋章の謎で仲間に出来るキャラはこれで全部。
 SFC版にはロジャーもジェイクもいないから、ここから難しくなるだろう。


「んー……やっぱり槍使いもっと入れた方が良いかな」

 来未は最初からブレずにイケメンパラダイス。
 あと得物にもこだわりがあるらしい。


 アストリア
 ジョルジュ
 サムソン
 マリク
 アベル


 女性ユニットには目もくれない。
 サムソンとマリクとアベルを指名したんなら、シーマとエリスとエストを入れないと!
 ついでにパオラも入れてくれたら修羅場ストーリーが見えてくるけど、来未はそういうの興味なさそうだしな……


 そして、俺は今こんな感じ。


 チキ
 アラン
 カイン
 ニーナ
 ミネルバ

 

 家族がコンセプトとはいえ、ペガサス三姉妹は敢えてスルー。
 まんまって感じになっちゃうと先に取られかねないからな。
 同様の理由でマリアも指名予定はない。

 ここまで末っ子、長男、次男、母、次女のイメージで指名してきた。
 ニーナ様の母、ミネルバの次女感はわかってくれる人はわかってくれると思う。
 あとカインの次男感も。

 残りの五人は三男、長女、三女、父、居候っぽいユニットの指名を予定してる。
 三女と居候はイメージ出来てるけど、他はまだ微妙だ。
 特に父はいないんだよな……ハーディン取られちゃったし。

 まあ、仮に残っててもあんな裏切り野郎要らんけど。
 プレイ中は冗談抜きでFから始まってKで終わる単語叫びそうになったし。

 ここは妥協して、長兄っぽいけどオグマにするか?
 それとも、年齢的にシリウスか?
 仮面付けた親父って嫌すぎるんだけど……

 仕方ない、ここはシリウスにしよう。
 ニーナ様が母ポジションだから、あんま気乗りしないんだけど仕方ない。


「では六巡目と行こうか。そろそろ情勢も見えて来たな」

 親父が不敵に笑う。
 どうせマチスだろ指名するのは。
 あんなの他に誰も指名しないから、どうぞ好きに持っていって下さいな。


「俺は【シリウス】を指名する!」

「私は【オグマ】ね」

「来未も【シリウス】」


 何っ!?

 ここで被るか……しかも二人も。
 しかも母さんに易々オグマを取られてしまった。
 奴も立派なシーダ姫の下僕……ここは多少ポリシーを曲げてでも指名しておくべきだったかもしれない。

「っていうか、親父はなんでシリウスなんだよ」

「仕方あるまい。こんなネタキャラそうそういないだろう」

「まあそうだけど、ビラクいったら次はマチスなんじゃないの?

「マチスは要らん」

 親父に戦力外通告出される兄貴……さもありなん。
 マチスは要らんわな。

「来未はなんでこのタイミングでシリウス?」

「ふふ……来未気付いたんだ。この人、多分カミュ様の関係者でしょ! 多分双子の兄弟! だからイケメンに決まってる!」

 いや本人です。
 変装してるつもりなのに服と髪型変えないって凄いよな。

「では勝負だ深海! 来未!」

 結果――――俺の勝ち。

「ぬかったーっ!」

「なんでーーー」

 うーん、初めて抽選で勝ったけど微妙に嬉しくない。
 まあ仕方ないか。世の中は広いし、仮面の父親くらいいるだろう。

 残るは四枠か……
 

 チキ
 アラン
 カイン
 ニーナ
 ミネルバ
 シリウス


 うーん、なんか家族って感じはあんまりしないな。
 やっぱニーナ様が母役でカミュが兄役って変なんだよ。倒錯感あるし。

 コンセプト変えるか。
 よし、『心に闇を抱えた人々』にしよう。
 
 
 チキは洗脳されてたし、アランは病で余命幾ばくもなく、カインはモテ男アベルの隣でいつも煮え湯を飲まされている。
 ニーナは悪女だし、ミネルバは兄殺しだし、カミュは言うまでもなく色々あって幸運が死ぬほど低い。
 あらためて見ると結構悲惨な面子だ。

 となると、残りの指名は――――

 

 

「――――これで十人揃ったな! ではドラフトを終了する!」

 親父の高らかな宣言と共に、FE紋章ドラフトは幕を下ろした。
 あとは指名した十人を見せ合い、プレゼンし、最も優れた十名だと判定された人が勝つ。

「まずは俺だな。我ながら良い面々が揃ったものだ」

 やけに自信満々の親父が集めた十名は――――


 ジェイガン
 ハーディン
 トムス
 ミシェラン
 ビラク
 サジ
 マジ
 バーツ
 ボア
 バヌトゥ


「どうだ! 面白かろう!」

 ……何が?

「えっ、何が? ムサい爺さんとオッサンばっかじゃん。絵面汚ったな」

 来未も同じ感想だったらしい。
 本当に何が面白いのか全くわからない。

「えぇぇ……? だ、だってジジイだよ? 闇堕ちオールバックだよ? ツルツルだよ? アッー!だよ? のそのそ歩いてオノでドッカンのムサい三連星だよ? ボアとバヌトゥだよ? そんな面々が同じ空間にいるんだよ? 面白くない?」

 親父のセンスは90年代で止まっているからなのか、誰からも理解は得られなかった。

「お父さんはなんか考え過ぎなんだよ。来未の集めた十人を見てよ、もうイケメンばっかで完璧だから!」

 確かに来未はわかりやすい。


 アストリア
 ジョルジュ
 サムソン
 マリク
 アベル
 シーザ
 ロディ
 ゴードン
 ライアン
 ユベロ


 しっかりイケメンばかり揃えた感はある。
 けど……

「最後の二人はアウトだろ」

「そうね……この面子でショタはちょっと母さん看過出来ない」

「ちょっとお母さん! ショタって言わないでよ! 来未違うからね!?」

 とはいえショタだ。仕方ない。
 イケメンとショタは相容れないのだ。
 ゴードンでも結構ギリだしなあ……

「べ、別に来未は美少年ならなんでも良いって訳じゃないんだからね! 消去法っていうか、このエルレーンっての金髪だけどなんか嫉妬深そうな顔で嫌だし、ウルフってのは融通利かなそうだし」

 外見だけしか知らない割にキャラ理解度高いなこいつ。

「せめてチェイニーとか選べばな」

「え? この人男なの? 女じゃないの?」

 ……ああ、そうか。そう見えるよな。
 何にせよ、色々ツメが甘いのが来未らしい。

「残るは母さんと俺か」

「事実上、一騎打ちね」

「だな」

 母さんと火花を散らす。
 実際、良い勝負だ。
 俺の揃えた面子も一目でコンセプトがわかる、良いグループになった。


 チキ
 アラン
 カイン
 ニーナ
 ミネルバ
 シリウス
 パオラ
 カチュア
 フィーナ
 エルレーン


 コンセプトを変えた事で、片想いの多い三姉妹から二人選出。
 カチュアはまだしもパオラは精神的にかなりヤバそう。
 エルレーンは正直あんまり加えたくなかったけど、闇っつったらこいつだしな……やむを得ない。

「母さんは完璧なオタサーの姫を作り上げたな」

「ふふーん」

 満足げに微笑む母さんのドラフトは――――


 ナバール
 サムトー
 シーダ
 カシム
 ロレンス
 オグマ
 マルス
 ジュリアン
 マチス
 リカード


 ナバールと関係のあるジュリアン、ジュリアンと関連のあるマチスとリカードを加える事で、『こいつらは絶対シーダと関わってるだろうな』と思わせる説得力がある。

 悔しいが完璧な陣容だ。

 でも、俺だって負けては――――

「深海、なんでフィーナを選んだの?」

 ……う。

「いやほら、フィーナはナバールに片想いしてる訳だし、心に闇を……」

「全然そんな印象ないけど? 最終的にくっついた可能性もあるし」

 し、しまった……痛いところを突かれてしまった。

「片想いなら、リンダで良くない?」

「リンダのマリクへの好意は作中でそこまでは……」

「その慎ましやかさが闇っぽいんじゃないの? フィーナよりよっぽどそっち寄りだと思うけど」

 ぐ……鋭い。

「どっちも有能キャラだけど、特殊能力重視で選んだの? コンセプトより使い勝手優先? どうなの深海」

「いいぞ母さん! そいつ最近調子乗ってるから懲らしめてやれ!」

「そーだそーだ!」

 母・父・妹のトライアングルアタック……!?

「いや、その……」

「どうなの」

 ……ダメだ、もう誤魔化しきれない。

「踊り子が……好きなんです……」

 耐えきれず俺がそう告白した瞬間、勝敗は決した。

 


 最終結果

 1位 母さん(多分元オタサーの姫だからシーダへの感情移入がスゴい)
 2位 俺(踊り子はね男のロマンなんだよ)
 3位 来未(ショタはいけない)
 4位 親父(ジジイとオッサン寄せ集めてもタフガイにはならない)












                                                           もどる